悪い寝相に潜む怖い病気 レム睡眠行動障害
子供でもドタンバタンと悪い寝相には問題がある。まして大人の場合は、将来的に生活に支障をきたす病気が隠れている可能性があり、そのまま放置しない方がよい。寝相が悪く、睡眠中に暴れて、隣で寝ているパートナーに怪我をさせる、あたかも目を覚ましているかのように暴力をふるう、理由のわからない度重なる暴力のため、離婚になってしまったという話しも珍しくない。2度結婚し、2度離婚し、3度目の妻とは別々に寝ているとのボヤキから、病気が判明した例がある。仕事に支障をきたすほど日中の眠気に困って来院した男性の妻に、就寝中の夫の寝相を聞いてみると、自分は危なくて隣の部屋に避難している。隣の部屋から、夫が就寝中に大声で叫んだり、ドタンバタンと足で蹴る音がする。何事かと覗いてみると、布団を相手に取っ組み合いをしていた。翌日は、熟睡感不足のため、日中の眠気に困ることになる。頭のCT検査やMRI検査では、脳は正常で異常は認めない。
この寝相の悪さには、立派な病名、レム睡眠行動障害という名前がついている。この病気は、圧倒的に中高年の男性にみられる。レム睡眠とは、一晩に4~5回続く浅い睡眠である。普通なら筋肉の脱力を伴い、寝返りもできにくい睡眠で、記憶を整理整頓する大切な睡眠である。この重度のレム睡眠行動障害は放置すると平均12年後には半数近くの人がパーキンソン病や多系統萎縮症を発症し、さらにその先には認知症を発症することがわかってきた。ストレスと過度のアルコール摂取によって症状が増悪する。寝相の悪さが気になる人は、放置せず、寝相をスマホでビデオ録画し、専門医の受診をお勧めしたい。