腫瘍マーカーPSAの話

 

一時期、市民権を得ていた腫瘍マーカー、最近は、癌の早期発見には感度も特異度も低くあてにならない、意味がないと評価を下げてしまった。それでも検診では、腫瘍マーカーであるCEA、CA19-9、AFP、SCC、PSAなどは、未だに検査項目として選択できる。

日本人が一生の間に癌になる確率は、男性60%、女性50%であり、2人に1人が癌になる時代。癌年齢になったらどう対処するか、皆の関心は高い。厚生労働省はもちろんのこと、文部科学省も癌教育推進を掲げ、小中高と一貫した癌教育プログラムを組んでいる。癌は国民病と言われる時代、癌への関心が高まる時代に、当然期待されるべき腫瘍マーカー検査が失速した。多数ある腫瘍マーカーは、癌治療後の効果判定には役立っているが、早期発見には不向きとの烙印を押されてしまった。唯一残ったのは、前立腺癌の特異マーカーとしてのPSA検査である。

このPSAは前立腺特異抗原と呼ばれ、前立腺から分泌されるタンパク質だが、加齢により前立腺が肥大しても上昇する。射精や激しい運動の後も一時的に上昇する。したがってPSA値が4ナノグラム/mlを超えて6~10ナノグラム/mlとなっても、必ずしも癌とは限らない。一方、PSA値が正常範囲であっても、前立腺癌が存在するケースが10%ある。したがってPSA値4~10の範囲はグレーゾーンと呼ばれている。PSAが10を超えると、前立腺に針を刺す針生検を受けるが、癌が見つかる確率は20~30%と意外に低い。しかもこの人たちが80歳を超えた高齢の場合は、治療するかどうか対応に迷い、経過観察となる場合も多く、本人に不安を与えるだけのPSA狂騒曲になるケースも珍しくない。腫瘍マーカーの現状に対し、国立癌研究センターでは、腫瘍マーカーにとって代わる、癌早期発見、特に検診に有用なリキッドバイオプシーの開発を急ピッチで進めている。