鉄不足と不定愁訴
鉄は人が生きていく上でとても大切な元素である。鉄が不足した時に体に現れるサインは、疲れやすい、息切れ、めまい、気分不安定、イライラ、集中力・記憶力の低下、脱毛、爪の変形、氷を好きになる異食など、多彩である。鉄不足による貧血以外にも、体調不良の原因となっている。そのメカニズムは興味深い。鉄は、脳内の主要なホルモンであるセロトニン、ドパミンの生成に必要な酵素の働きを助ける、補酵素という大切な役目を担っている。だから、鉄が不足すると、セロトニン、ドパミンは、共に不足することになる。幸せホルモン・セロトニンが不足すると、不安になり、落ち込みやすく、情緒不安定、気分憂うつになる。セロトニンは、睡眠ホルモンメラトニンの原料だから、セロトニン不足⇒メラトニン不足⇒不眠となる。一方、やる気ホルモン・ドパミンが不足すると、やる気が出ない、気分が落ち込む、イライラ、注意欠陥多動、むずむず脚など、生活の質低下に苦しむことになる。
さらに不足を放置し続けると、神経難病パーキンソン病や精神障害統合失調症を患うことにもなる。60年前、私が大学を卒業し、実習生インターンとして勤務していた頃、内科の教授が、この薬は内科治療に革命をもたらすと絶賛していたのは、なんと新しく承認された鉄の徐放剤であった。胃腸への負担を軽減する工夫がなされているため、長期内服に適している。この徐放剤は、ありがたい薬だが、徐放剤ゆえのデメリットもある。誤嚥しやすい高齢者には、徐放剤の誤嚥はすぐに溶けないために、かなりキケン。すぐに溶けるクエン酸第一鉄の方が安全である。鉄不足は放置せず、フェリチンの値が正常化するまで、かかりつけ医と相談しながら気長に飲んで頂きたい。