男性のでっ腹は危険シグナル

先月は、小太りは長生きの話をしたが、同じ小太りでも歓迎されない小太りがある。それは、内臓脂肪型肥満である。健康な脂肪は皮下に、不健康な脂肪は内臓や肝臓(異所性脂肪)に蓄えられる。ホモサピエンス200万年の歴史のうち199万9千9百年は、飢餓との闘い、空腹との付き合いであった。産業革命、農業革命から100年は飽食の時代となった。過剰に摂取されたエネルギーのいく先は、男性と女性で大きく異なる。女性はホルモンの作用で脂肪をおしりと大腿に蓄え、魅力を倍増し、男性を惹きつける。一方の男性は、ホルモンの恩恵はなく、過剰なエネルギーは内臓に蓄えられ、見た目のよくないポッコリ腹の姿となる。このポッコリ腹は働き盛り50代男性に多く、一見、精力的で堂々と見える。だがしかし、でっ腹男性は、メタボリックシンドロームという厄介なお荷物を背負い込み、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、心筋梗塞、慢性腎臓病など、多様な病気に苦しむことになる。パンパンに膨れ上がった内臓脂肪細胞からは、炎症性の悪玉サイトカインが分泌され、身体は常時、慢性炎症の状態に陥る。定年を迎えほっとした頃から、慢性炎症の延長に、がんや間質性肺炎など、危険な病気のリスクを抱えることになる。肥満でポッコリ腹の男性は大腸がん、膵臓がんのリスクも高く、美食家のポッコリ腹の男性は、間質性肺炎のリスクが高くなる。どちらも致命的な病気である。対策は、バランスのよい食事指導では生ぬるく、食べない健康法、飲まない健康法に取り組まないと、楽しい老後は待ってはくれない。朝、夕2食、または、1日1.5食のハードなスケジュールでポッコリ腹をへこませるしかあるまい。がん闘病のしんどい抗がん剤治療、間質性肺炎で酸素ボンベを引いて歩きたい人は誰一人いるはずはない。